「不思議の国のラビン」(純真舞台×Alice Memories)

「不思議の国のラビン」(純真舞台×Alice Memories)
「不思議の国のラビン」(純真舞台×Alice Memories)

Alice Memories×純真舞台 朗読公演「不思議の国のラビン」

原作/有栖沢りょう
脚色/保邑リュウジ
演出/獅堂祐希(純真舞台)
2024年3月8日(金)〜10日(日)
御茶ノ水KAKADO

【あらすじ】

この広い宇宙にある、地球から遥か遠い「惑星不思議の国」に、アリスという名の少年が住んでいました。
ある日、アリスは森の中で、1匹の紫色の髪の少女ウサギ・ラビンと出会いました。2人は毎日のように一 緒に遊び、やがて生涯を共に歩むことを誓う仲となりました。
しかし、少年アリスには、将来女性らしい見た目を持つという、自らも知らない能力が備わっていたのです。
一方、「惑星不思議の国」の隣にある女装文化を持つ民の星「惑星jyo-soh」の行動部隊・JR(Jyo-soh Resistance)のメテオは、アリスの能力を知り、全宇宙に女装文化を広めるための 広告塔にしようと、アリスを誘拐するために、「惑星不思議の国」に侵入しました。
その動きを察知したアリスの父親は、アリスを眠らせ、宇宙船に乗せて、2人で地球へ向かったのです。
しかし、ラビンはその宇宙船に乗ることができませんでした。
アリスと離れたくないラビンは、宇宙ポリスとしての訓練を積みながら、地球へ向かう機会を探ります。
地球に辿り着いたアリスの運命は?
そして、ラビンとアリスの再会には、悪の生命体・トッドドーラの出現によって波乱が!
果たして、2人はどうなってしまうのでしょうか。

CAST

  • 後藤瑠美
  • 一本鎗希華
  • 渡辺史織
  • 大津寄奏子(YScompany)
  • 来栖ナツキ
  • 堤亮一※8日19:00、9日14:00、10日18:00は2役
  • 芳尾孝子
    (以上、シングル)
  • 逢坂美華※8日19:00、9日14:00、10日18:00出演
  • 益田芳生・えこの みぃ※9日19:00、10日13:00出演

コメント

この公演は、第0回公演「シン・赤ずきん」を見に来ていた、出演者の由良瓏砂さんの知人の有栖沢りょう氏が、ご自身のライブイベントで行なった寸劇(?)「不思議の国のラビン」を、俳優や声優の力を借りて、本格的な作品として上演したい、という意向を持ち、由良さんを通して獅堂に作品作りの依頼をしてきたことから始まっている。
12月公演の終演後の客席でその話をされたのだが、春には上演したいということだったので、かなり急いで準備をすることになった。
まずは、大元の寸劇の脚本を保邑氏に渡し、プロットを新たに作成していただいた。有栖沢氏の大元の脚本は、長さの問題や、キャラクターが多いこと、展開に無理がある部分があること等から、保邑氏はかなり原作に変更を加えたプロットを出してきた。それを、原作者の有栖沢氏と由良さんと僕で検討し、その上で脚本修正の方向性を決めて、再度保邑氏に依頼をした。そして出来上がったのが、3月に上演した朗読劇の脚本である。
有栖沢氏にしてみれば、シーン展開やキャラの修正が結構あったので、内心気に入らない部分もあっただろう。ただ、前記のライブイベントの出演者には、修正した脚本は好評だったので、間違った方向に「歪曲」したのではなかったと思う。

キャスティングも短期間でやらなければならなかったので、なかなか大変だった。純真舞台と有栖沢氏で手分けして探したが、何せ本番までの期間がなかったので、一部キャストは難航した。アリス役は原作者の希望ということで、久々の瑠美ちゃんにお願いした。タイトルロールのラビン役は、獅堂がXで目を止めた一本槍さんになった。その他、いつものように出演者の伝手等を使い、初めましての人からお久し振りの人まで、多彩な顔ぶれが揃った。また今回は、朗読公演では珍しく(?)一部がダブルキャストになった。
稽古開始前に、初めましての人とは、獅堂が面談を行なった。その結果、当初予定していた役から変更になった人もいた。こうして、短期決戦の稽古が始まった。

始まってみると、様々な問題が噴き出てきた。元々は劇中歌があったのだが、歌練の時間が取れず、完成品としてお客様の前で披露できるかどうか不安だ、という相談をキャストから受けた。また、もう1人の歌うキャストから、稽古最終盤に扁桃腺炎を発症し、歌えなくなったという連絡も受けた。このため、急遽生歌を中止した。歌のシーンを全く無くしてしまうと、作品として成り立たなくなってしまうため、苦肉の策として、歌唱をするキャストを変更の上、キャストの歌をオケ音源とミックスし、それを劇中で流すことにした。稽古最終日にバタバタと行なったので、関係者は大変だったと思う。
また、諸般の事情により、ダブルキャストの1人を降板させて、その役はシングルにし、シングルキャストの1人をダブルキャストに、ダブルのもう1人は、別のシングルキャストに兼ねてもらった。この決断も、小屋入り2日前のことだった。僕としては、苦渋の決断だった。

こうしたアクシデントのため、座組全体に緊張感が生まれたこともあって、本番は出演者全員かなり気合いが入っていた。少年漫画のような内容や、かなり展開が早くなったこともあって、どんな風に受け取られるのか正直不安だった。しかし、やってみると、お客様には概ね好評だった。
アリス役の後藤さんとラビン役の一本鎗さんは息もぴったりで、物語を引っ張ってくれた。途中でシングルキャストになった来栖さんは、プレッシャーもあった中で、しっかりと役を構築していた。急遽二役をやることになった堤君をはじめ、他のキャストもいい仕上がりとなった。
特筆すべきは殆どの台詞が「にゃあ」だけのチシュ役の大津寄さんと、ナレーターも兼ねていたアリスの母親役の渡辺さんの演技である。どちらも、脇で支える役ながら、重要なポジションであり、かつ、非常に難しい役でもある。2人とも、これを見事に演じて、作品を締めた。特に、母親役の渡辺さんは、見事というしかない安定感で、普段はコミカルな役が多いとは思われない、重みのある存在感を十二分に発揮していた。

千穐楽、カーテンコール後の客席から手拍子が起こり、所謂ダブルコールが行われた。完成度の点でどこまでいけるか正直不安があったのだが、自分達の作品がちゃんとお客様に届いていたと証明するようなダブルコールだった。原作との違いが引っかかっていた有栖沢氏に対しても、一定の責任は果たせたと自負している。
純真舞台になって初めての外部企画の公演であり、その作風もこれまでの純真舞台のものとはかなり違っていたが、何とか形にすることができ、この先の活動の可能性が広がったという意味で、苦労はしたが、有意義な公演であった。


「不思議の国のラビン」(純真舞台×Alice Memories)
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「不思議の国のラビン」(純真舞台×Alice Memories)
「不思議の国のラビン」(純真舞台×Alice Memories)
(写真 ©がんもと)

「不思議の国のラビン」ダイジェスト映像